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エッセイ
「レンタルCD店には小宇宙があった」

平成初期、僕の自宅の最寄り駅前には、個人経営のレンタルCDショップが店を構えていた。店舗は狭く、ごちゃごちゃした陳列で、最初はどこに目当ての音源があるのか全く分からなかった。流行りものの入れ替えが激しい上、店主こだわりの円盤がいつまでも目立つように置いてあって、ほとんどカオスだつた。そのおかげでスネークマンとか初期のTHE BOOMのヘンテコで楽しげな音源に出会えたので、いまだに僕は店主の親父さんに感謝しているのだ。
あえてトライアンドエラーで好きな音楽を探したいんだ!と頑なに思い込んでいた、インターネット環境のない20才前後の僕のような者は当然外ればかり掴まされた。とはいえ、世間一般的には名盤の誉れ高い音源と後に知る。単に主観的な好みの問題だったようだ。僕はその認識なく、1970年代パンクのことを、あれはダメだねと誰彼なく語り、振り返ると、あれは恥知らずだったよなと思うのだ。だったらニルヴァーナとかU2もダメと言わなきゃ話の整合性取れないのに。

数年後、TSUTAYA等の大型店舗+全国チェーン展開の企業レンタルショップの攻勢(これも太古の話ですね)により、駅前の小さなレンタルショップにも、残念なことに閉店の時が来た。
閉店セールとして、店のレンタルCDはすべて売りに出され、値段は大盤振る舞いという名の投げ売り価格が付けられていた。実情手元にあっても邪魔だったのだろう。
僕は閉店セール初日の午前中に足を運んだのだが、目星い音源はほとんど売れた後だった。普段は見かけない客も棚を鋭くチェックしていて、個人的には世間の世知辛さよとしか思えない記憶だ。
僕は島唄のヒットで知られるTHE BOOMの初期の初期な音源を買って帰ることにした。A peace time BOOMというアルバムで、1989年リリースのBOOMのメジャーデビュー作である。帰ってCDを再生すると、軽快なスカのビートに乗せて、幼稚なようで実はすれすれのことを歌う、あの頃の彼らの勢いと危うさが部屋に流れ、新しい発見があった。そういえば歌詞の意味を考えたことなかったなと。
ところがこのCD、盤面に数多の傷が入っており、すぐに再生不良を起こした。メガネ拭きで丁寧に復旧を試みたのだが、聴けなくなってしまった。非常に惜しかったが、捨てるしかなかった。入手価格は100円とはいえ、値段の問題ではない。ただ残念だった。
現在僕はCDで音楽を聴くことはあまりしなくなった。優れた曲でも動画込みでないと物足りないという飽食ぶりだ。当時よりはるかにテクノロジーの進化した社会で、個人的には失ったものも多いと理由もなく感傷的な気分になる。あの闇雲な労力を絶対にもう一度費やしたくはないとはいえ。

Written by ハロハロハウロー

2023/7/31