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【小説】Cat's castle magic

第三話 猫タワーとは その2 

「バリケード高」僕は引き返したかったが、ヨーダに軽視されるのは不本意だった。「平気、まず扉の上にジャンプで両手を掛けたら、一気に片足を鍵の部分に載せて全身を上に引っ張る、簡単だよ」ヨーダは難なく扉の向こうに着地した。ヨーダより推定20センチほど長身の僕にそれができないとは、言いたくない。しかし僕は身体が硬い上、筋肉が体重+αの負荷を支える設計になっていない。扉を派手に軋ませて僕はバリケードを乗り越えた。「猫の大群いる」猫タワーの奥から模様も体格も様々な猫がミャーミャーミャーミャーと寄ってきた。誰かが餌を与えているのだろう。僕らを全く警戒する様子がない。とはいえ、日の光の差さない屋内では猫の目は不気味に発光する。僕は後ずさりしそうになる。「大丈夫、この子たちは大切にされてきて性格もいい、たぶん」ヨーダは斜め掛けにしたカバンからビーフジャーキー等の酒のつまみを取り出して与える。子猫を優先させる群れの絆が微笑ましい。しかし、毎食これを食わされたら彼ら逆にかわいそうなことになってしまう。僕はこの思い付きが何故かツボにはまってしまい、ひそかにジャバ・ザ・ハットの笑みを浮かべた。建屋の構造は、頑丈にできているようで、危険は少なかった。これまで取り壊しをしなかったのは、壊すためのコストがかかって難しかったのだろう。しかし、あちこちに錆びた鉄筋が突き出ていて、ボーっと歩くわけにもいかない。「屋上あるんだ、この建物」階段を登り切ると、頭上には夕焼け雲がミルフィーユ状にたなびいていた。5月も終わり、梅雨入りが近いとは思えないほど西側に開けた風景は遠くまで見通せた。 (続く)


written by ハロハロハウロー

2023/4/26