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【小説】There is the place

闇と言われて、多くの人がなんとなく思いつくのは、犯罪組織というイメージであろうか。この闇という語句に対する長年に渡る誤用は、実にひどい刷り込みだと僕は非常に憤激を覚えている。一言で言って、違法行為を闇とは言わない、それはもう違法・非人道的ですと言えばいいのだ。闇とは決して光と対立関係にあるような、ましてや害をなす存在の象徴などではなく、意味や価値を越えてたしかに存在するものなのである。闇とはつまり、僕にとって世の移り変わりの早さ、世知辛さがどうにも苦手で、人生に迷ったとき、いつでも逃げ込める観念的世界なのだ。闇に善も悪もなく、扱う人のパーソナル次第ということにどうか注意しておいてほしい。言いたくないが光もまた同様である。
闇は安心して思索に遠慮なく没頭でき、心は穏やかだ。そして、考えごとの内容をぽつぽつと文字に変換してみて、その意外な凡庸さにいつでも微笑ましさを感じるし、ささやかな癒やしにもなる。例えるなら馴染みの定食屋でいつも注文する生姜焼き定食に、大がかりな斬新さを求める者は少ないように。
考えてみると、闇について表現しようとするとき、普段は明るい性格の人の方が、作品の完成度として吹っ切れた水準に達しがちな傾向は認めざるを得ないだろう。とはいえ、作品の軸となる価値観は、世間一般のイメージにて収斂しているケースが極めて多い。そう、闇という言葉そのものへの偏見を殊更に強力にするような。
というわけで、悪徳、陰湿、易暴力的、嘆かわしさ、隠し持つ悪意というものの枕言葉に「闇」を安易に使うことを本当にやめてもらいたい。その雑すぎる用法の数々が僕にとってみれば図々しくてわけの分かんねえ侵入者である。


written by ハロハロハウロー

2023/3/16