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【小説】Cat's castle magic

第四話 100万回生きたとしても

「景色いいね」
逆光で、ヨーダの姿はシャドウ掛かっている。細い肩からストンと羽織ったオーバーサイズのシャツが強風でパタパタなびいて、今にも頼りなく消えてしまいそうだ。今まで人や物事をそんなふうに考えたことは一度もなかった。
ヨーダは僕のボーダーシャツの袖先を掴んで僕に何かを言おうとしている。
緊張の糸が千切れてしまった。何かが崩れて、外面と内面の区別が消えた。
「ヨーダ!」僕は叫んだ。
「与田麗依亜!!」
「きっと、僕を、僕のことなんて、夢を叶える頃にはきれいさっぱり忘れるんだろ!
ぜってー言うかと耐えたけど、もう言うわ!僕の人生、これから落ちる予感しかなくて、君は陽のあたる道を歩く確信がある!その差を考えていたたまれないよ!
どうして僕なんかを構う?はっきりと言うなら僕は心に深手を負うと分かりきった事態を自ら抱え込むのは辛い、これ以上はもう辛いだけなんだ!」
一瞬猫のように目を見開いたヨーダの返答は辛辣だった。僕のことを勘が働くだけに哀れだと言っていた。僕が泣くことを至極当然だと笑みを浮かべて断言した。
あぁ神様!!因果も善悪も前世も業も大きなお世話だよ!大して生きてもこなかったのに再来週には20歳だよ!願い事は今日沈む夕陽を頼むからもう一度東から昇らせてくれ!時間が戻ると知っていれば、ヨーダにこんな卑屈なぶっちゃけを言う未来ごとなかったよ!この先何十年、僕はヨーダのそばにいられない人生を生きなきゃいけない?親友とメンターを同時に失って本当にゴミですらないんだ!
少なくともこの世に一人、僕を軽蔑する人が増えた。この世の終わりではないが、手足は鉛のようだ。生きていれば生き直すこともできるが、テンパって言っただけの一言がいつまでも自分を苦しめることも確実にあるのだ。 
(終)
  
written by ハロハロハウロー

2023/5/8