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【小説】Cat's castle magic

第一話 猫タワーとは


実家の近所には悪名高い廃墟があった。150坪程度の敷地に4階建てのコンクリート造の建屋が、建設中のままで何年も風雨に打たれていた。目付きの悪い大柄な猫が何匹も住み着いており、猫タワーと呼ばれていた。そういった建造物の常として、猫タワーについてのおどろおどろしい物語が県内広域にわたりまことしやかに語られていた。
しかし、古くからの地元民は、事実を知っていた。バブル景気のおかげですっかり勘違いした不動産開発業者が、元は公園だった土地の一部に、一階が店舗スペースのアパートを建てる計画を立て、建設中にバブルが崩壊し、その上アパートのオーナーも見つからず、事業継続が不可能になった結果、猫タワーは建設途中のままで、好景気と不景気の狭間に取り残されていたのだった。なので、景観は非常に不気味ながら、特に曰くある土地や建物ではないのだ。時代は1995年頃、ニュースで伝えられる事件は深刻だったものの、身の回りにさほど殺伐と思う出来事は見当たらなかった。
当時僕は19才と11ヶ月と20日だった。大学生の端くれで、成績はとても悪かった。読むべき本は山程あり、卒業までに取らないと、就職活動で詰むであろう資格もまた多かった。しかしながら、取り組み方が分からず、理由なく先延ばしに見ないようにしていた。一年前は就職に強い学部に入試通っておれ最強、とイキっていたのが、ただの勉強嫌いの残念な学生ができ上がっていた。
その上、地元の元同級生たちは、僕のことを頑なに無職と思い込んでいた。これからまさに学校へ行こうとしているのに、「行くとこないのにどこ行くの」と肩をどつかれたり、しようもない言いがかりは続いていた。
(続く)



written by ハロハロハウロー

2023/4/18